ピッチング編 腕の振りについて
腕の振りについて
知人の方からこんな相談を受けました。
「子供は肩の力が弱いため、強く投げようとするとどうしても横投げになってしまう・・・」
というものです。
確かに、肩に力が無いと肘を上げて投げるのが”困難”になります。
大人でも、腕を上げたままの状態をキープし続けていれば、腕がだるくなってきます。
それだけ、腕を上げるのに”肩の力”を消耗するからです。
だから、まだ体の出来ていない少年の場合は、腕が上がらず横投げになるのも無理のないことです。
この腕力不足による肘の下がりは、それ程気にしなくても良いと思います。
と言うのも、小学校高学年、中学、高校と進学し、体が成長するにつれて自然と肘も上がって来るようになるからです。
ただし、普段から注意しておきたい事があります。
それは、上から投げるという意識をもって練習する事です。
キャッチボールやピッチング練習の時に、肘を上げて投げるという意識を持っていれば、後は体の成長とともに自然と矯正されていきます。
〜なぜ横投げはダメなのか?〜
そもそも何故、横投げではダメなのでしょうか?
『肘(ひじ)の位置』でも書きましたが、肘が肩のラインよりも下がらなければ、横投げでも良いのではないでしょうか?
それはその通りで、プロの選手でもサイドスローの選手はたくさんいます。
しかし、サイドスローで投げるよりも上から下(オーバースロー)に投げた方が、ボールの勢いは増します。
ピッチャーがサイドスローで投げると、ボールの勢いは上から投げた時よりも落ちますが、横に対する変化球は上から投げた時よりも増します。
だから、ピッチャーが横から投げるのは、変化球の切れが増すと言うメリットがある訳です。
このように、ピッチャーなら良い面もあるのですが、野手がサイドスローで投げるのはあまり良くないことです。
なぜなら、オーバースローの方が勢いのあるボールが投げられるからです。
ショートゴロでファーストへの送球を考えたとき、走者の足との勝負になります。
しかも、深い位置からだと遠投になります。
距離(遠投)やスピードを出すには、サイドスローよりもオーバースローの方が断然有利になるからです。
なので野手の場合、無理な捕球姿勢からの送球では横投げになることもありますが、基本は上から投げるようにします。
〜なぜオーバースローの方が力は強いのか?〜
人間の腕は、横の動きよりも上下の動きの方が強く働く性質があります。
これは、生物の進化に関係があるとされています。
魚類から両生類・爬虫類・哺乳類へと進化が進むに連れて、ヒトは両足で立つことを覚えました。
地球上のあらゆる生物で、2足歩行をするのはヒトだけです。
このヒトの進化で見ると、2足歩行の歴史よりも4足歩行の歴史の方が長いわけです。
気分が悪くなったり、マラソンのように体力を消耗すると下を向いて呼吸を整えたりしますが、あれも臓器がタテ向きよりもヨコ向きの方が楽だからだとされています。
このように、2足で歩くヒトへと進化したとは言え、まだまだ4足時代の名残がいっぱい残っているのです。
さて、話しを腕の上下運動に戻すと、4足歩行の動物はイヌでもウマでもゾウでも、足を前から後ろへと動かします。
この動きを人間に当てはめると、腕(前足)は上下の動きをしている事が分かります。
つまり、上下の動きはヒトへと進化する以前から行われており、ヨコの動きよりもタテの動きの方が効率の良い事がわかります。
2足歩行の歴史よりも4足歩行の歴史の方が長いわけで、体の構造からしてもまだまだ4足動物から学ぶ部分は多くあるのです。
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〜どんなスポーツでも・・・〜
野球意外にも、腕を上下に運動させるスポーツはあります。
バレーボール・テニス・バトミントン・・・・。
これらのスポーツに共通したことは、スマッシュあるいはアタックを決める時は全て上から下への動きになっています。
スマッシュあるいはアタックを打つ前に、ネットがあるので高い位置から打つ必要があると言うのもありますが、野球でもこの上から下への動きは勢いのあるボールを投げるヒントになります。
阪神の藤川投手も、「上から叩きつけるようにして投げる」と言っています。
ピッチャーでは球持ちが良いと言われるように、前でボールを放すことも大事です。
しかし、あまり前ばかりを意識していると、ボールを放すリリースポイントが下がってしまいます。
なので、リリースポイントの目安としては45°くらいが目安になります。
前でボールを放すと言われますが、今言ったスマッシュの腕の動きが理想の腕の使い方となります。
なので、シャドーピッチングや腕の振りを確かめたいと思った時に、バトミントンのラケットを持って振って見ると、腕の使い方がよく分かると思います。
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